(2020/12/12追記: 5.4実装にともない、再生編の「層」「ボス名」「クエスト名」の英語解説・考察を追記しました。勢いのまま書いてしまったため、再生編だけ少し豪華になっています)
機工城アレキサンダー以降、日本語とは違い各層にあてられている英語名。コンテンツに参加したときに、画面に大きくドーン! と出るだけのものなので、あまり印象に残ってはいない、という人も多いのではないでしょうか。
今回は、見落とされがちな覚醒・共鳴・再生編、そして各層が冠する英単語について、キリスト教的視点を交えて意味のご説明&考察をしていきたいと思います。
(この記事は私自身の一連のツイートを元に再編集しており、内容にほとんど違いはありません。元ツイ(まとめ)を確認したい場合はこちら(覚醒・共鳴)およびこちら(再生)をご利用ください。)
各編の意味
覚醒・共鳴・再生。5.4の発表に伴い、全ての編の名前が出揃いました。英語ではこれらとは(おそらく)関係の無い、かつ聖書にゆかりのある名前がつけられています。
そもそもの「エデン (Eden)」が、旧約聖書におけるアダムとイヴがかつて生きていた「楽園」を意味することは、広く有名ですね。
漆黒のストーリー全体に散りばめられた「罪」「許し (フォーギブン "forgiven")」「羊飼い」などの聖書のイメージは、ここでも見られます。
実際に確認してみましょう。まずは一覧です。
- 覚醒編:Eden's Gate
- 共鳴編:Eden's Verse
- 再生編:Eden's Promise
では、それぞれの語が意味するものについて。
- 覚醒編:Eden's Gate
Gate:天国への門のことで、しばしば「扉」や「門」という言葉としてたとえ話などの説教のうちに現れます。門というのも具体的にどんなだ、という記載まではなかったかと思いますが、比喩表現の一つと考えていただけるといいのかもしれません。
- 共鳴編:Eden's Verse
Verse:特に聖書の章を構成する「節」を指します。
- 再生編:Eden's Promise
Promise:最初に宗教的な「救済」としての「約束」を想像しましたが、もう少し調べてみると「(神による人間への)約束」のような形で、聖書中に複数の記述があるようです。
各層の意味
次に各層の名前について。こちらもまずは一覧から。
【覚醒編】
- 1層:Resurrection
- 2層:Descent
- 3層:Inundation
- 4層:Sepulture
【共鳴編】
- 1層:Fulmination
- 2層:Furor
- 3層:Iconoclasm
- 4層:Refulgence
【再生編】
- 1層: Umbra
- 2層: Litany
- 3層: Anamorphosis
- 4層: Eternity
覚醒編
- 1層:Resurrection
「リザレク」でおなじみですが、「復活(蘇り)」という意味の語です。聖書において、キリストは磔刑に処されてしまいますが、その3日後に復活します。聖書にも、祈りのことばにも多く現れる単語です。
「エデンの目覚め」としても取れるのが面白いところです。
- 2層:Descent
「高いところから下る様子」や「降臨」を意味し、磔刑後、キリストが十字架から降ろされる様子を「降架」とも呼びます。
余談ですが"Descent"の反対語は"Ascent"で「天へと昇る」という意味合いを持ちます。キリストは復活ののち40日後に昇天したと言われています。宗教上では、しばしばセットで使われる単語です。
「突如として、予想もしない人が現れる」という意味もあるので、ガイアの登場をほのめかす語彙ともいえるでしょう。
- 3層:Inundation
「(地を覆うほどの大)洪水・氾濫」というイメージの語です。聖書では神の力を示す語句としても使用されています。
神の怒りによる洪水を免れた「ノアの方舟」でも使われている語なのかと思ったら、ざっと調べたところ"flood"が使われていました。
リヴァイアサン戦(水)と考えると、そのままのイメージな単語ですね。
- 4層:Sepulture
「埋葬」のことです。同義かはわかりませんが、英英だと"sepulchre"、「墓」でした。"Holy Sepulchre"でキリストの降架と復活の間に埋葬されていたお墓のことを表します。
そういえばタイタン戦(土)でしたね。
余談
Inundation(洪水)を除く3つは、キリストの磔刑後の「降架」「埋葬の地」「復活」と、順番はばらけているけれど繋がりのある語が並びました。
共鳴編
- 1層:Fulmination
「激しく非難する」こと。「雷轟(光)」のような意味も。聖書では「神による雷」という表現が多く見られ、「主の怒り」と捉えることもできるのかなといったところです。
ここはラムウおじいちゃん(雷)でしたね。「神のいかずち」というイメージには適合しています。
- 2層:Furor
「(大きな怒りを伴った)騒動」という意味です。"furor"で聖書の内容を調べたところ、使徒言行録の一文しか検索には引っかかりませんでした。
二体と戦う層だったことを考えると、複数でドンチャン激おこマーチなイメージにぴったりかもしれません(?)
- 3層:Iconoclasm
「聖像(偶像)破壊運動」のことです。
運動を行う人を「アイコノクラスト(社会通念を批判してばかりいる人)」と呼ぶようです。この批判に感情が交じるなら、これも「怒り」と扱えるのかも。
「偶像破壊」でピンと来たひともいらっしゃるかもしれませんが、3層の敵の名前は「ダークアイドル (Dark Idol)」でしたね。直訳すれば「闇の偶像」です。
「偶像崇拝」はキリスト教では禁忌の一つとされ、聖像破壊運動も、ローマ皇帝による禁止令により行われたそうです。
- 4層:Refulgence
「強い輝き」の意味合いを持ち、煌々ときらめくイメージがある語です。例は多くないですが、聖書にもキリストを形容する単語として使用されています。
4層では「光」とついた攻撃名が多く見られたことが記憶に新しいです。
余談
"Iconoclasm"だけは聖書というよりも、キリスト教を含む宗教に関わる語彙として知ってはいましたが、他に関しては聖書に直接関係があるかと言われると…という感も否めません。
聖書にこじつけた部分も少なくはありませんでしたが、1-3層までは「怒り」が伴った単語、そして4層は「光」に関連する語彙となっていました。
再生編
- 1層: Umbra
「本影」という意味の語。ここにおける本影は「物に光が当たるときに光の影響が観測されない影の領域」。つまり、「光の入り込まない絶対的闇の象徴」 = 「暗闇の雲」という表現かと思います。
通常は太陽光が天体に当たる際に、その光が遮られた場所を呼ぶ場合が多いようです。
- 2層: Litany
「連祷」または「厭わしい言葉の繰り返し」を指します。
連祷は「キリスト教会のミサにおいて、司祭と人々が交互に連続した祈りの言葉を捧げる」こと。エデンは全体を通して宗教的な語彙が多いので、こちらかと思ったのですが、実際には「ガイアの脳に響いてやまない耳障りな囁き」という後者の含意があると捉えるといいかもしれません。
- 3層: Anamorphosis
「歪像」。「物の高さや幅をおおきく歪めた像」のことを意味します。
「おまいさんのいっちゃん強い思うモン召喚したるわ」という言葉から、えらくフュージョンしてしまったパパンズが降ろされてしまったのは記憶に新しいですね。この歪像が示すものは「リーンが抱く、『最強の父親像』を歪めたもの」でしょう。
- 4層: Eternity
エターナルバンドはそうでない場合も多いですが、「永遠」という意味。ストーリーに合わせるなら、「アシエンとしてのミトロンとガイアが抱く『時に囚われない理想郷』」のことであると言えると思います。
余談(各層のボス・クエスト名について)
【ボス名】
- 一層:
- 【日】暗闇の雲 - 疑似妖異 -
- 【英】The Cloud of Darkness - Abyssal Abhorrence -
直訳すると「暗闇の雲 - 深淵の嫌悪 -」。
- 二層:
- 【日】影の王 - 反英雄-
- 【英】The Shadowkeeper - Ravening Antihero -
直訳すると「影の番人 - 飢えし反英雄 -」。
"keep"は「守る」「保持する」。"ravening"は「飢える」。
獣(動物)に使われる語なので、ボスにぴったりの形容詞です。
一見したときに「カラス」から派生してるのかなと思ったんですが、語源はまた別の様子でしたので割愛。ただカラスといえば「影」や不吉の兆しを想起させる動物なのでこじつけて考えてみたくなりますね。
- 三層:
- 【日】フェイトブレイカー - 最強幻想 -
- 【英】The Fatebreaker - Dread Hope -
直訳すると「運命を壊す者 - 恐ろしき希望 -」。
"fate"は「(避けられない)運命」。"dread"は「(起こりかねない事柄に関する)恐怖・不安」。
"dread"は"hope"とは真逆の意味になりますが、調べてみると"Hope and Dread"という心理分析の書籍が存在していたり、並べて使うこともある様子です。
"hope(希望)"の対義語は"despair(絶望)"ですが「未来に対する気持ちを表す語」として"hopeと"dread"は並べることができるのかもしれません。まるでミトロンたちと、リーンたちの向かわんとする道の違いを示しているかのよう。
- 四層:
- 【日】プロミス・オブ・エデン - 楽園幻想 -
- 【英】Eden's Promise - Utopian Vision -
直訳すると「楽園の約束 - 理想郷の情景 -」。
「"Promise of Eden"と"Eden's Promise"って何が違うねん!」という人もいらっしゃるかもしれません。同義といってしまってもいいんですが、より突き詰めていうなら「強調したいものがあるかどうか」でしょうか。
少しだけ文法的なお話をすると、"of"は「『分離』・『起源』を表す語」(ロイヤル英文法p.692)であり、"A of B"は「切り離されているけれど、AはBに関係し由来している」といったイメージを持つことができるかと思います。つまり
"Promise of Eden" = 「楽園」よりも「約束」本体に主眼を置いた語。
"Eden's Promise" = 「楽園」と「約束」の繋がりが直接的。ただ、この場合は特別に「約束」を強調するわけではない。
といえるかと考えます。
【クエスト名】
日本語と英語で並べています。余談のないものもあります。
日本語 | 英語 |
---|---|
この戦いが終わったら | Empty Promise |
暗闇、再誕 | Fear of the Dark |
いにしえの記憶 | Shadows of the Past |
騎士の誓い | Voice of the Soul |
いつか再び生まれてくる命たちの物語 | Where I Belong |
- 【日】「この戦いが終わったら」
- 【英】"Empty Promise"(空虚な約束)
「再生編」というより「約束編」で良くない…? ってくらい、冒頭から「約束」というテーマを押し出す名前です。
日本語だと「『水晶祭の実行委員をしようね』というリーンとガイアの約束」だけを示している感じがありますが、英語では「『離れない』というミトロンとアログリフの約束」も含めて表現されているのかもしれません。
そして四層の英語名"Eden's Promise"につながっていくわけですね。
- 【日】「暗闇、再誕」
- 【英】"Fear of the Dark"(闇の恐怖)
(わかりやすい言い換えだったため割愛します)
- 【日】「いにしえの記憶」
- 【英】"Shadows of the Past"(過去の影)
「記憶」を「影」と言い直しているのが特徴です。
ミトロンがガイアに対して「お前の隣にいるのは自分ちゃうやんけ!」てなことを言っていましたが、今のガイアがリーンという光に照らされているのだとしたら、ミトロンとガイア(アログリフ)が共有した「いにしえの記憶」は、光により隠れてしまった「長らく日の目を見なかった、忘れられた影のようなもの」といってもいいのかも。
- 【日】「騎士の誓い」
- 【英】"Voice of the Soul"(魂の声)
日本語は「ミトロンからアログリフに向けた想い」を表現していますが、英語だと「かすかに残り抵抗する、ガイアの意識」という感じかと思います。
目の前で思い出を消されるリーンの目の動きがすごくヨカッタ。
- 【日】「いつか再び生まれてくる命たちの物語」
- 【英】"Where I Belong"(私の居場所)
ガイアのミトロンへの台詞、「アンタの魂は、エデンから解放され、転生の旅に出る。そしたらいつかきっと……また会えるわよ」が、日本語の題の全てです。
「いつか再び生まれてくる命たちがめぐりあう、理想郷の象徴となれるように(ガイアという名前でいたい)」という願いと、その命のうちの一つであるミトロン。転生したらまたいつか、どこかで出会えるといいですね。
転じて英語では「私の居場所」。「自分の出自の詳細は聞かないでおく(=ユールモアには帰らずに、ここにいる)」という「ガイアとしての生」をテーマに置いた題でした。
ネックレスを握って、リーンと水晶祭の話で盛り上がる姿を見ると、思春期の頃に感じた友情を思い出してしまいます。目から汁が出るわ。ぼっちだったけど。
まとめ(のようなもの)
漆黒のヴィランズのシナリオ自体が、聖書を思わせる語句を多く散りばめている作品でした。それはレイドも例外ではありません。
地名やアチーブメント、敵の名前一つとっても聖書やキリスト教のモチーフが隠されていることも多いので、プレイ中に気になったものがあれば調べてみると面白いかもしれませんよ…!
少し種類は違いますが、このブログではキャラクターのセリフの日英比較や、スキルの日本語訳などもご紹介しています。
ご興味があれば、以下もぜひご覧ください。

